五臓六腑の役割ー六腑編ー
胆、小腸、胃、大腸、膀胱、三焦を総称して六腑といいます。六腑は、飲食物の通路であって、精や気血を蔵さず、栄養を消化・吸収し、残ったものを大小便として排出する働きがあります。ただし、胆は他の腑と違い飲食物の運搬や排出に直接関与することはありません。六腑の役割。
1 胆
胆は、決断や勇気を主ります。
胆は、身体の中央に鎮座して、全身の重心となり、公平中立の立場で落ち着いて他の臓腑の活動状況を監視し、適否の決断に任ずる器官です。また、こころの落ち着きは、大胆さや勇ましさに通じていて、これを胆が主ります。
胆気が強ければ、精神的なストレスに対する抵抗力が強く、弱ければ少しのことにもビクビクしたり、しばしばため息をつくようになります。
肝の余気は胆に泄れ、集まって胆汁となります。胆汁は比較的清浄で、精気を含み、腸や膀胱内のかすや排泄物と異なります。胆は、飲食物の消化吸収に直接参与することもありませんが、精汁を流すことで、脾胃の消化機能を助けています。この働きが不調になると、飲食物が胃から逆流して口が苦くなったり、苦汁を嘔吐したりします。
2 胃
「胃」とは、飲食物が入る丸い袋状の器官を意味し、「脘」(かん)と同義です。
胃は、膈(かく)の下に位置し、上は食道と、下は小腸に連なります。胃の上口は噴門(ふんもん)、下は幽門(ゆうもん)で、噴門部を上脘(じょうかん)、幽門部を下脘(げかん)、胃の中央部を中脘(ちゅうかん)と呼びます。
胃は、脾とともに飲食物を消化吸収し、気を全身に送り出す源となるところです。これにより、臓腑・手足を始め、全身の活動が支えられています。胃が不調になると、上腹部痛、噫気(あいき:ゲップ)、呑酸(どんさん)、嘔吐、胸やけ、吃逆(きつぎゃく:しゃっくり)などが現れます。
3 小腸
腸は、長く伸びた腹ワタを意味します。そのうちの細い部分が小腸で、太い部分が大腸。
小腸は、上は幽門に連なり胃と通じ、下は大腸と連なり、小腸と大腸の連なるところを闌門(らんもん)といいます。
小腸は、胃から送られてきた糟粕(そうはく:飲食物のカス)を受け取り、それを水分と固形分に分け、水分は、前の膀胱へ滲み、固形分は後ろの大腸に送ります。小腸の働きが不調になると、これらの分別が不十分なまま大腸に送られ、下腹部痛や下痢などの原因となります。
4 大腸
大腸は、上は闌門に連なり、下は直腸に連なっていて、直腸の下端は肛門となっています。
大腸は、小腸から送られてきた糟粕を転送しながら変化させ、糞便として肛門から排泄します。大腸の働きが不調になると、腹鳴、下痢、便秘などの症状をもたらします。
5 膀胱
膀胱とは、小便袋を意味し、下腹部の前方に位置します。
人体内に取り入れられた水分は、肺、脾、腎、三焦の働きにより全身を巡った後、気化作用によって膀胱に集め貯えられ、やがて尿となって排出されます。膀胱の状態は排尿の機能に現れ、不調になると、水液を集めることや、集めた水液を排出することの異常として現れます。下腹の腫れや痛み、小便閉、尿失禁などの症状をもたらします。
6 三焦
三焦とは、特定の器官を指すのではなく、飲食物を消化吸収し、これらから得られた気血津液を全身に配布し、水分代謝を円滑に行わせる一連の機能を指し、上焦、中焦、下焦に分けられます。
三焦の働きは、体温調節作用、気血津液の調整作用、輸瀉作用(体内の不用な物質を輸送する働き)の三つにまとめることができます。
まず上焦は横隔膜から上部の機能を指し、その働きは、飲食物から得た気、特に陽性の衛気(後天の精から得られる陽性の気)を全身に巡らせることです。これにより、皮膚を潤し、体毛に栄養を与え、体熱を産生し、体温調節をします。臓腑では、膈より上の心肺と関係が深くなります。
中焦は横隔膜から臍までの間の機能を指します。その働きは、飲食物を胃の中で時間をかけて腐熟させ、そこから生じる精気を、営気(後天の精から得られる陰性の気)と血とし、経絡を介して全身に巡らせることです。臓腑では、膈より下で臍以上の脾胃と関係が深くなります。
下焦は、臍から下部の機能を指します。その主な機能は、糟粕に含まれる不要な水分を分離して、膀胱にしみ込ませることです。臓腑では、臍以下の腎・膀胱・小腸・大腸などと関係が深くなります。