東洋医学の五臓六腑
古代中国では、すでに戦国時代(紀元前400年頃)に、体内の臓器が、体表部の五官や手足の筋肉などと緊密に関係していると考えていました。東洋医学における内臓観を簡単に説明していきます。
1 東洋医学の内臓観
2 臓腑の位置、五臓の形状
3 臓腑間の関係
1 東洋医学の内臓観
東洋医学では、内臓について、単なる体の構成部分ではなく、経脈とならぶ人体の生理的、病理的現象や、精神活動の中心となるものとしてとらえています。これを「蔵象」と呼びます。「蔵」とは、体内にしまわれている内臓をさし、「象」は、外に現れている生理的、病理的な現象をさしています。その「蔵象」という臓腑生理学(蔵象説)が形成されるにあたって、古代における解剖を通じて得た知識・人体の生理的、病理的現象の観察の集積・鍼灸などを用いての医療効果の分析、経験的要素の集積がその基礎となっています。
臓腑が、精神や体の各部に影響を及ぼすのは、「精」「気」「神」を介してである。
臓腑は、精(血、津液を含む)と気の生成と運行を支配しており、この精と気の状態によって、人体のさまざまな生理的あるいは病理的現象が現れる。
また五臓は、精神活動の本となる神を育む。
2 臓腑の位置、五臓の形状
古代中国では、東洋医学発展のため、かなり克明に解剖が行われ正確な解剖知識を持っていたことがわかっています。形態学の分野では、人体の骨格、血管の長さ、内臓器官の大小と容量など、現代医学の数値とほとんど一致しています。春秋戦国時代には、鍼による臨床実践の手引書となる書物も作成されていました。
【五臓の形状】
肺:重さ 三斤三両
六葉と両耳、すべて八葉
魄を蔵するを主る
心:重さ 十二両
中に七孔三毛あり
精汁三合を盛る
神を蔵するを主る
肝:重さ 二斤四両
左三葉、右四葉
魂を蔵するを主る
脾:重さ 二斤三両
扁く、広さ三寸、長さ五寸
血をつつむことを主どり
五臓を温め
意を蔵するを主る
腎:重さ 一斤一両
両枚あり
志を蔵するを主る
*一斤=十六両≒600グラム
*一両≒37.5グラム
3 臓腑間の関係
臓腑間には、ある臓と、ひとつの腑との間に表裏の関係があり、一対となって五行のうちの一行に属しています。五行とは、木、火、土、金、水の五種の物質のことであり、中国の古代人が、日常生活と、その生産活動の中から不可欠の基本物質として認識したのが、この五種の物質です。
臓腑とは、五臓:肝・心・脾・肺・腎(心包を合わせて六蔵ともいう)、六腑:胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦をそれぞれさします。
また、全てのものを陰陽で区別し、対立または相互に制約しあう二つの面からとらえる陰陽論では、六腑を”陽”、五臓を”陰”と分けています。
これが鍼灸医学の理論を体系化するために用いた「陰陽五行論」での関係性です。