ツボの話 ー始まりからー
ツボは経穴(けいけつ)とも呼ばれWHO(世界保健機関)ではその数361穴と定められています。
経穴とは長期に渡る鍼灸治療の臨床を経て、発見された体表に現れる特殊な反応点のこと。
その部位に刺激を与えると、酸(だるい、鈍い痛み)、麻(麻痺)、脹(腫れ)、重(重い)などの感覚が一定の経路を伝わり響いていく、この経路が経絡(けいらく)と呼ばれます。
その経穴の始まりはいつ頃どのようなものだったのか『まんが経穴入門』の力をお借りして簡単に紹介していきたいと思います。
1 経穴の起源
2 経穴と経絡
3 経穴の命名と分類
1 経穴の起源
経穴の起源は石器時代にまでさかのぼります。
人類はまだ動物の種から分かれたばかりで、物事を認識したり理解したりする能力もまだ未熟だった頃の話。
あるとき、狩の途中で尖った石や植物のトゲで体表を傷つけたり、出血したりすることで、本来あった痛みが偶然楽になるといった現象がたびたび起こりました。
何度も同じような経験をすることで、この現象に関心を持つようになります。そこで、石などを使って体表を刺激すれば痛みが軽減することを徐々に覚えていきます。
新石器時代に入ると、研磨技術を身につけかなり精巧な刺鍼治療用の石器を作り始めます。それが「砭石(へんせき)」と呼ばれる鍼具の誕生です。制作技術の進歩に伴い、動物の骨、竹木、陶土などが使われるようになりました。
殷商から秦漢の時代までに冶金(やきん:金属を精製し加工すること)の技術が飛躍的に発展したことが鍼の道具の進歩に大きく影響を与えています。
また、灸法の発明も経穴の発展に大きく貢献しました。
人々は火を使い始めると、まず火に向かい暖をとるようになり、後に火で温まった石や土のかたまりを体に当てて暖まることを覚えます。それからそれを体のある部位に当てると、ある種の疼痛を軽減できることに気づきます。
例えば、「温かい石をお腹に当てたら寒さで痛かったお腹が楽になった。」「関節の痛みも楽になった。」とか。
後に、ある部位を焼灼することで疾病の症状が軽減することも発見していきます。
つまり、殷商時代の早い時期にはすでに刺鍼治療や灸法なども広く流行していて、作用点である経穴の数もかなりあったと思われます。
2 経穴と経絡
経穴とは、長期にわたる鍼灸治療の臨床を経て発見された体表に現れる特殊な反応点のこと。
その部位に刺激を与えると、酸(だるい、鈍い痛み)、麻(麻痺)、脹(腫れ)、重(重い)などの感覚が一定の経路を伝わり響いていく、この経路が経絡と呼ばれます。
人の健康は体内の元気左右されます。その元気は内的には陰陽のバランス、外的には絶えず変化している自然環境の影響を受けています。その元気の通り道を経絡と呼んでいます。自然界の変化は五臓六腑や気・血・水にも影響を与えるとされています。
中医学の経絡学説では、『天人合一』(てんじんごういつ:”天”ー宇宙・森羅万象なる自然ーと”人”とは統一体であるという考え方)の時空論を背景に経穴をひとつの単位とし、人体の五臓六腑、四肢百骸と経絡を機能的に結びつけ、完成された体系とみなしています。それは経穴を刺激したときに現れる酸・麻・重・脹の感覚がいくつもの流れとなり、まさに12本の大河をくまなく巡るようなイメージで。
その中医学には、「不通則痛」(通じざれば則ち痛む)という言葉があります。これは、経絡上で気血の流れが悪くなり通じなくなると、痛みが発症するということです。則ち経絡内で気血を導き運行を活発にすることにより、滞りや痛みの解消になるということになります。
3 経穴の命名と分類
経穴の主治作用とその分布している部分は全て一定の特徴を持っています。
古人はそれをもとに、長い時代をかけ選別しまとめ上げて、経穴の名称を決めました。
経穴は比喩法、象形法、会意法、写実法の4種類の方法を用いて命名されています。
比喩法:天文、地理、事物などを参考にしながら命名する方法。
経穴の特徴、主治作用、所在する部位などをもとに、事物の間に関連する現象や性質を考慮して決定します。比喩法を用いることで経穴の特徴をはっきりと描写することができます。
例えばよく耳にする「合谷」(ごうこく)というツボ
象形法:経穴の所在する部位の外形(骨、肌肉や皮膚のシワなどの特徴)から、形の似ているものに例える方法。
例えば鳩尾(みぞおち)あたりにある「鳩尾」(きゅうび)というツボ
会意法:経穴自体の生理、病理から解剖学的な部位の特徴をもとに命名する方法。
例えば耳前にある「聴宮」(ちょうきゅう)、手掌にある「労宮」(ろうきゅう)というツボ
写実法:経穴の分布部位や主治作用などをもとに、写実的な方法を用いて命名する方法。
例えば膝の上の内側にある「血海」(けっかい)というツボ
最後に、経穴の命名は生理、病理、部位、特徴だけに頼るのではなく、それぞれの主治作用とも関連して命名されているということです。したがって経穴の命名を研究することは、経穴の本質を把握することにほかならないということです。